名菜と一緒にリビングに降りると、兄ちゃんはマリオカートをやっていた。

こっちを見てニヤニヤしている。


「……何?」

「べっつにー」

「兄ちゃんのそういうとこ腹立つ」

「なんだ、郁は反抗期か?」

「うるさい、死ね」


兄ちゃんの持っていたコントローラーを奪った。

一瞬触れた兄ちゃんの手は、もう女の人を知っている手。泣いている怜香の横顔が浮かんだ。


「兄ちゃんさ、そうやって余裕ぶるのホントムカつくんだわ」


「お前より2年も長く生きてるからな。そりゃ心にも多少のゆとりはできるさ。

ていうかそういう心構えがないと、やかましい弟達の兄ちゃんなんてやってられないっつーの。

……ほら郁、対戦するぞ」


「えー、二人でずるい!わたしもやりたい」

「名菜は松川さんのとこいっといで」

「むきー!」


名菜は地団駄を踏んで俺のコントローラーを横取りした。


「これぞ必殺、タイフーン横取り」

なんでもかんでも頭にタイフーンをつければかっこよくなるとでも思ってんのか。