「再来週のお花見、行ける人いるか?」

その日の晩ごはんで父さんに聞かれた。


「わたし行く!桃子ちゃんと約束してるの」

「俺は部活あるから無理かな」

「そっか、郁と祥平はどうする?」

「オレ、行かなーい」


祥平は多分そういう年頃。
俺もこの頃はそうだったけど、家族と一緒にいるのが恥ずかしいんだろうな。


「郁、どうする?できれば名菜の面倒見てほしいんだけど」


やれやれ。始まっちゃったら父さん酔っ払うから、面倒どころじゃないんだろうね。


「わたし、もう面倒見てもらう年じゃないんですけどー」


名菜のほっぺがぷくっと膨れる。兄ちゃんが親指と人差し指で名菜の両側のほっぺを挟むと、口からぷすっと空気の漏れる音がした。


「俺、別に行ってもいいよ」

「そうか郁、ありがとな。母さんは仕事だったから、お前がいてくれると助かるわ」


父さんがホッとした表情を見せた。