「ふみ兄が失恋したこと、いく兄に言ってもいい?ふみ兄が試練から乗り越えるのに協力してもらうから」

ぎくっとした。何を言い出すんだこいつ。


「おい、名菜。郁だけには絶対に言うな。

ていうか誰にも絶対言うなよ」


「……もう、聞いちゃったんですけど」


……しまった。廊下には郁がいた。

俺はものすごく恥ずかしくなって、その場でうなだれる。


「うわー!いく兄にバレちゃったー!」


……ほんとにここからは試練だな。

郁に弱みを握られ、失恋から立ち直らないといけないなんて。


「……兄ちゃんドンマイ。

ほら名菜。母さんの手伝いしにいこっか」


まあいっか。


スマホを取り出し、衣里のデータを削除してから台所へ向かった。