「ねえ名菜、俺、失恋したんだ」

軽く言ったつもりだけど、名菜はちょっと困ったような表情を見せた。

「……大丈夫?ふみ兄、苦しいの?」


名菜の小さな手のひらが俺のほっぺに触れる。


「うん、そうだね。苦しいよ」

「あのね、ふみ兄。失恋は、大人になるための試練なんだよ。

だから頑張って乗り越えないと、大人になれないんだよ」


そっか、俺はこれから乗り越えないといけないんだな。


「乗り越えるのが苦しくなったら、名菜に手伝ってもらおっかな」

「うん、もちろん!」


名菜は俺に抱きついてきた。


「あー、女の人の匂いがするー」

こいつ、そんなことわかるのかよ。