体を離してその澄んだ瞳の奥を真っすぐ見つめた。

同じように衣里も真っすぐに俺を見つめてくる。


ためらうことなく、唇を重ねた。


壊れものを扱うように優しく髪を撫でる。

一つ一つを確かめるように、その唇から頬やまぶたに向かって、俺は何度も何度も唇を落とした。

衣里は目をつぶったまま、だけどまだ少し強張りながらも、俺の唇を感じているように見えた。


「史弥……くん」


いきなり名前を呼ばれて少し照れくさくなる。

だから俺もつい、わしゃわしゃっていつも名菜のことを撫でるように衣里の頭を撫でてしまった。衣里は頬を赤くしながらはにかんだ。


「そろそろ行こっか。今日は一緒に学校行く?」


「……ごめん、やっぱりそれはまだ待って」


気持ちが通じたと思ったのに、なかなか手強い。