衣里の手を握った。

瞬間にびくついたその手は、また俺を切なくさせる。


……俺だって不安だよ。


「ごめんね、不安にさせて。ほんとは俺が衣里のそういう気持ち、気づいてあげないといけなかったのに」


衣里がうつむきながら首を小さく振った。


繋いだ手と反対側の手で、ゆっくり背中に手を回し、抱き寄せる。


目をつぶり、腕の中の衣里を感じる。


俺だって同じことを思っているんだ。

衣里がこの腕の中から消えてしまったらどうしようって。

こうして抱きしめてても、俺の気持ちちゃんと伝わってるのかなって不安になるんだ。


……そうだよね。俺は気持ちを衣里に伝えていなかったんだ。


「ごめんね、衣里。

俺、ちゃんと大切にするから。

不安とか……いろんなものから衣里のこと、守ってあげたいんだ。


そりゃ全然俺だってすごいやつとかじゃないしさ、衣里にとっては心配なところもあるかもしれないけど……

でも、全力で幸せにしたいって思ってるんだよね」


「うん……」


「……好きだよ、衣里」