私は驚きに目を見開いた。


佐伯商事は大企業だ。そこの息子って事は尚輝は御曹司?



「付き合ってる頃から知ってるだろ?」


「…………知らない。尚輝先輩は会社社長の息子って事しか………。」


「会社社長の息子で合ってる。俺は佐伯商事の副社長だ。」


「…………うそ………。」


「嘘じゃない。」



尚輝はポケットから名刺入れを取り出し、私に名刺を差し出した。私はその名刺を受け取り、恐る恐る見れば………。



「副社長?」


「ああ。朱里、来月から本社に配属だ。そして俺の秘書になれ。」



唖然と尚輝を見上げた。今の会社でも社長の第2秘書として働いてはいるが。



尚輝先輩の秘書?



「無理。尚輝先輩の側では働きたくない。」


「会社命令だ。それとも辞めるか?」



冷たい声を出す尚輝を見上げれば、鋭い視線を私に向けている。