ジリジリと近づく尚輝から後退りするが、目の前に近づく尚輝がクスクスと笑った。



「朱里、逃げるなよ。」


「話は何?10年振りに何か用事?」


「ああ、話がある。」



目の前に立つ尚輝を見上げた。私も女子では高い方だろうが尚輝は更に高く私は見上げた。


クスリと笑った尚輝が耳を疑う言葉を発した。



「俺の秘書になれよ、朱里。」


「えっ?」


「だから……俺の秘書になれよ。」



私は眉間に皺を寄せて尚輝を見た。


何で秘書に…………?



「今の勤めている会社S&Tから佐伯商事の本社に配属だ。」


「何を勝手に決めて………。」


「子会社から親会社へ配属だ。喜ぶ所だろうが。」



ニヤリと笑う尚輝を見つめた。



佐伯商事の本社に配属……?




「佐伯商事………。」


「あれ?知らない?俺の親父が社長してる会社だ。」