イヴは彼と昔会ったような気がした
しかし思い出そうとしても頭の中にモヤがかかっているみたいに思い出せない

「じゃあ今から少しずつ知っていって下さい」

彼の目がジワジワと紅に染まった

私の意識はそこから離れられなかった
そしてどんどん吸い込まれていった

「んっ」

イヴは柔らかな唇の感触で意識が明瞭になった

ロイの胸を叩いて抵抗したが
逆にもっと深く吸われてしまった

イヴは自分の唇をきっちりと閉めていたつもりだが、どこからともなく入って来てしまったその舌はイヴの全てを
奪ってしまうようだった

「やめてっ」
精一杯の力でそう言ったが
簡単にあしらわれた

「イヴ、力を抜いて下さい 舌が奥まで入りません」

そのとき隣の部屋で寝ていた人の声が聞こえた気がして
絡んでいた舌を思いっきり噛んだ

「痛っ、ひどいです」

ロイの口から血が垂れた
側から見たら吸血鬼にしか見えない

カーテンから漏れた月光が紅の目をギラギラと光らしている