家を出たのはいいが
優樹の姿が見当たらない

家から学校まではほぼ一直線と言っても
構わないぐらい真っ直ぐなのに
どういうことなのだろう

私は考える像のように
頭を傾げた



「何やってんだ?」

玄関の前で立ち止まっていた為
冷たい視線を送ってくる
片割れの兄

先に出たはずの優樹が
何故か私の後ろに立っている

「昨日言ってただろ
 今日は乗っけてやるって」

呆れたような口調の優樹に苛ついた私だが
確かにそういう約束を思い出し
反論することさえできなかった

優樹の自転車の後ろに座ると
自転車が走り出した

「なんで卒業式前に
 自転車をパンクさせるんだよ」

不満そうに言われるが
仕方がない

私は一昨日の帰り
運悪く自転車をパンクさせてしまったのだ


自転車で片道20分はかかる通学路を
歩くとなると
1時間近くかかるのではないかと思う

それなのに昨日は歩いて通学したため
遅刻してしまった

昨日は
兄と姉は朝練
優樹は答辞の練習
共働きの父と母は早出だったようで
最後に家を出ることとなった


だが自転車がパンクしていることを
忘れていた私は
いつもと変わらない時間に家を出たのだ

流石に卒業式で遅刻するという
度胸を私は持ち合わせてない

そういう事情で
昨日の夜に優樹に頼み
今、後ろに乗せてもらっている