「優奈、起きろ」

その声は聞き覚えのある声で
夢の中の彼とは違うと半ばがっかりしたが
やはり安心させられる
そんな事を考えながら
私は瞼を開けた

もちろん
私の前には
私の片割れの優樹

「おはよう、優樹」

そう言いながら私は体を起こすが
いつもならそこで優樹が遅刻だのなんだのと
上から罵声が飛んでくるのに
今日は何故か何も言ってこない

どうしたことかの
優樹の顔を見ると
びっくりした様子で
私をみていた

「優樹?どうかしたの?」

そんな優樹に声をかけると

「逆にお前こそどうしたんだよ」

意味のわからない言葉が帰ってきた
どういうことかわからないという顔をしていたのだろう

「だからなんで泣いているんだよ」

その時私は初めて気づいた
自分が泣いているということに

ただ何故泣いているのかわからない
もし理由があるとしたら

「夢をみたの」

「夢?」

そう、あの懐かしく
そして幸せそうな夢の中の2人

誰なのかはわからないが
姫と呼ばれる女と従者らしき男

そういえばいつもみる悲しい夢に出てくる
2人にそっくり…
まさかとおもいつつ

「まぁ、早くしねぇと入学式遅刻だからな」

優樹は部屋を出た