でも 一番見られなかったのは お兄ちゃんだった。 涙も見せず、ただ一点に ビジョンを見つめていた。 立ち尽くし、拳をにぎり、 感情さえ出していない。 たった0.2秒の差にお兄ちゃん はどんな思いを持ってたん だろうか。 悲しかったのかな。 悔しかったのかな。 実はすっきりしていたのかな。 今までキラキラを輝いていた お兄ちゃんがこの時、 とても小汚く、哀れに見えた。 お兄ちゃんはずっと 立ち尽くしていた。 お兄ちゃんが短距離を走るのは これが最後になった。