「…美術…準備室」
ヤスがやっと立ち止まったのは、美術準備室のドアの前。
ドクン、ドクン。
やっぱりとは思ったが、どうしてー…
握られた手に、汗が流れてしまう。
「…永井は疑問に思わなかった?」
「え?」
繋がれていたヤスの手が、離れた。
「どうして俺が、永井の住所がわかったのか」
「あ…」
そうだ…あの時はヤスが家に来たことに驚くだけで、そこまで考えがなかった。
「俺の時と一緒だよ」
「ヤスの時と?」
「永井に課題を届けに行ったのは、沢先生に頼まれたから」
ドクン。
「え…」
「永井が休んだ日の放課後、沢先生に呼ばれて職員室に行ったら、課題と永井の家の住所渡された」
ヤスは、前を向いたまま喋る。
「俺に宣戦布告しといて何考えてんだって思ったけど、¨課題と提出物を預かってきてくれ¨って。沢先生はそれ以上は何も言わなかった」
…どうして?
屋上で、"加藤に渡したくないと思ったからだ"って言っていたのにー…
「沢先生が何考えているかわからない。だから、永井が学校に来たらハッキリさせたいと思って」
ヤスが真っ直ぐな目で見つめてくる。
「永井も…いいよね?」
ドクン。
私はー…



