「俺は真面目に聞いてんの!」


「……ごめんなさい。

未来では、この時代と違って剣を習う女の人はたくさんいるよ。

でも、ほとんどの人が試合で勝つことを一番の目的とする剣道を習ってるの。

私は実戦用の剣術を習っていたから、この時代でもそれなりに通用したのかも」



平助は咲耶の言葉を理解するように頷く。


「なんとなく分かったけどさ、なんでみんな実戦用の剣術を習わないんだよ?
試合に勝てても実戦で役に立たなきゃ意味ねぇじゃん」


「実際に人と人が斬り合うことがなくなったからだよ。

未来では日本人同士が争うこともないし、刀も……」


そこまで言いかけて、咲耶はハッと口を止めた。


(これって今この時代を生きる平助に、言ってもいいことなのかな…。

未来のことをこの時代の人に話すのはいけないことのような気がする……)



「…っと、とにかく、未来では剣道の方が人気ってこと!」



どうにも無理矢理感が否めない結論で曖昧に話を終わらせた咲耶。

これ以上聞かないでくれ、と言わんばかりに視線を庭へ戻した。



「それってどういう「ごめんなさい!申し訳ないけど私、新しい歴史の立役者になる気はないの!」


バッ、と両手を顔の前に広げて平助の言葉を制止する。


「は、はぁ?何言ってんだよ?
詳しく教えろってば!!」


「や、やめて!!私にそんな大それたことできない!」