「…っ!」


(こいつ…、隙がない上に力量もその辺の男よりはある…!)



平助はなんとか力を振り絞り咲耶の竹刀を押し返した。


咲耶は押されて背中を反らせたが、すぐに竹刀を弾き再び飛び出す。


が、



「あっ」



袴の裾をつま先で踏み、そのまま前にのめり倒れてしまった。


平助は少し動揺したものの素早く竹刀を振り下ろし床に倒れる咲耶の首元に剣先を突きつけた。



「勝者、藤堂!」



宗次郎の声が掛かると、平助は腰をかがめて膝に手をつき咲耶に手を伸ばす。


「おい!大丈夫か?」


「ご、ごめんなさい…。お恥ずかしいところを…」


(試合中に思いっきり転ぶなんて恥ずかしすぎる…!

おまけに顎も痛いし最悪…)



平助の手を取りよろよろと立ち上がる咲耶。


それから咲耶と平助は初めの位置に戻り一礼する。


「ありがとうございました」

「ありがとうございました……」


痛い…、と顎をさすりながら咲耶はため息をついた。