この扉から出ると、カイルデン領地のフィンドル森林奥地に出る。扉と言っても本当に扉がある訳では無い。もし扉がここにあったと仮定すると、人々は気付き扉を開けてしまうだろう。そして、我々の世界がバレてしまう事になる…恐ろしい事だ。我々の世界は、影で人間界を守る存在。細かく言えば、人間界を調節する世界だろう。人間界は元々滅ぶはずだった世界。その滅びから救ったのは、過去に存在した澪達の力。そして、滅びの世界は過去の澪達により落ち着きを取り戻し、滅びに向かわない為にこの地に世界樹を残した。その世界樹を通して大幅守っている。今現在世界樹を守る澪は天聖結界に住む皆という訳ではなく機関にいるもので守っている。その機関に私も入っている。そして、私の妹も。機関の中でランク分けをされていて私は頂点の地位にいるが、妹キュールは2つ下にいる。早く私の所まで来て欲しいところだ。
 今回の任務は精霊が関係している。私達と共に人間界を守る者達だ。精霊は10体存在し、その中で第五精霊というものが有るらしい。この情報はペルフィーゼ様が持っていて中々私達には話してくれていない為詳しくは知らないが、今はその精霊全員、元素を持つ人間及び澪に融合しているらしい。私の知る限り、ペルフィーゼ様が精霊の一人リギートと融合している。その融合しているリギートからの命令で私はここにいる。人間界の危機が迫っていると。その危機を救うのが今回の私達の任務。まず手始めに融合体を探す所から始めなくてはいけない。その融合している人間や澪は気付かないことが多いともリギートやペルフィーゼ様から聞いた為難航しそうだ。だが、私の妹キュールもこの任務に参加していた事が嬉しく思う。基本的に私とキュールは任務で同じ所になる事が無く成長が見られていなかったのと、他の人よりも息が合うことだ。今、人間界は魔物で覆い尽くされている中戦いやすいのだ。そして、私が来たこの扉近くは結界が張られており魔物は入ってくる事が出来ない。逆に言ってしまえば、結界が無ければ囲まれていた。今は私だけだから、相当苦戦しただろう。結界を張ってくれた者達に感謝をしなければな。そして、もうそろそろ魔物を払っておいた方がいいな…。キュールを危険な目に合わせたくはないしな。
と、言いつつ結界を出ようとすると
「お姉様!!」
と言う声が扉の役目を果たす碑石から聞こえてきた。
「キュール…タイミングの悪い奴だ…」
「ふぅ。…お姉様!私(わたくし)を置いて行くとは酷いではありませんか!もし、結界が破れていたらどうしていたのですの!?」
「そう怒るな…。結界が破れていた時はその時で魔物を叩き斬るまでだ。安心しろ私はそんな事では死なない」
「…」
「不貞腐れるな…。私はキュールを危険な目に合わせたくないんだ。姉としてな。だからこそ先にここに出向いたのだ…わかるよな…?」
「しかし…。私はそこまで未熟者ではありませんわ。お姉様が見ていない間ずっと私は元素の力を上げてきましたもの。お姉様に劣らぬ様…必死に…」
「それは、分かっている。だが、人間界に来るのは何回目だ?」
「…三回目ですわ」
「そうだな。そんな少ない数で人間界の敵との相性が良いか悪いかなんて判別仕様がない。私は基本的に人間界への任務が多いから…」
「…ですが、負魔ノ巣の者とも戦ってはいましたわ!」
「それは、沢山の仲間と一緒にだろう?今は二人しかいない」
「…でも…ですが…!」
ガルルル…
「魔物かっ!?この声は人を襲う声だ!行くぞキュール!」
「ええ!この方向は入口の方ですわ!近距離は任せましたわ!」
「ああ!」
私とキュールは道の端と端にある木を上手く使いながら急ぐ。
「いましたわ!」
「私が魔物達の相手をする!キュールは」
「分かっていますわ!救出致しますわ」
「頼んだぞ!キュール!」
ガルルル!
「お前達の相手は私だ」
ガルルル…
「我と共に戦えっ!聖剣 レイソウル!」
私は耳につけていたピアスを外し、そのピアスは剣へと姿を変える。
「風火雷神剣!」
ガルルル!
「後二体!」
「私も援護しますわ!私の力見せてあげますわ!アイシルエイル!」
空から無数の氷の槍が降ってくる。私はそれを避け魔物を槍に当たるよう導く。
「こっちに来い!」
ガルッ
「後一体…っ!避けたか」
「動きよ止まれ、ウルストルス!」
「ありがとうキュール!これでとどめだ!」
ガルルル!
「よっし!」
「やりましたわ!」
「お前…大丈夫か?」
「助けていただきありがとうございます」
「何故何も無いこの場所に?」
「それは…この奥地にはマーテルの碑石があり僕は、機密事項の事を確かめに。貴方方は奥地から来たようですが…?」
「私達はミオクルスの任務により」
「ミオクルス…っ!あの天使機関のですか!?」
「ええ。そうですわ…」
「そうとは知らず…。僕はオルレイス教団の導師イムと言います」
「導師が来るという事は…」
「極秘機密というより僕の身勝手な確かめですが。僕はマーテルとの融合体なんです」
「…っ!?本当か」
「はい。ミオクルスの御二方には嘘をつきませんよ。本来の目的はマーテルとの融合がどうにかならないかと…。ここに来る前に火山へ行ってみたんですが何も無く、やはり本人の碑石ではダメかと思い」
「そうだったのですの…」
「なら、石碑の方へ向かった方が良いだろうな…また、魔物が出てきた…」
「そうですわね…。導師様は後ろへ!私達で仕留めますわ」
「僕も戦えます!」
「人間はお前の事を必要としている。死んではならない存在だ。ならば、命を張って来た私達が犠牲になる方がいい!キュール!」
「詠唱…我はキューリュイカ・ビウルシュア。ビウルシュア家の血を引く者。氷の使徒たちよ…我の名に従い力を貸しなさい!アイシクルレイス!」
雲行きが急に変わり渦巻いていく。風もそれに呑み込まれるように集まる。雲が一つにまとまるとひょうをキュールの頭上で集まること数十個。それが魔物に向かって放たれた。
「弓を使わない矢ですわ。死を持って味わいなさい!」
「…あの…力は…っ!」
「導師…何か言ったか?」
「い…いえ」
「そうか…」
「片付きましたわ!」
「そうだな。魔物が来ない内に石碑に行くぞ!」
「ええ!導師様は走れますか?」
「大丈夫です」
「ならっ!私は先を行く。キュールは導師を頼んだ!」
「分かりましたわ!行きましょう。導師様」
「ええ」

────石碑────
「はぁ…はぁ」
3人とも走り疲れ息を切らす。
「ここ…まで…来れば…大丈夫…だろう」
「そう…ですわ…ね」
「…」
「導師様?」
「…」
イムは石碑に向かい歩く。
「ようやく…ようやく…もどれる」
石碑の前につくと、
「…もう、あんたの身体返してあげるよ」
と、イムが言い、石碑を触る。そうすると、石碑が光り出す。
「っ!?何が」
「眩しいですわ!」
光の中で私が見たのは、導師の中から光が出て導師の前で形を作っていた。そして、光は消え、石碑の前に一人の男が立っていた。
「…僕は…戻れた。やっとだ!やっと!」
「…マーテル」
「マーテル!?」
「ん?アンタらは?」
「私はキュール。そして」
「ルミナーシャだ。導師…今マーテルと」
「はい。彼は僕と融合していました。ですが、この石碑と力が合わさり、姿無き精霊から姿を戻した」
「…小難しい話ですわ」
「じゃあ、元はといえ姿を無くした理由があると…」
「ああ。僕は…僕ら精霊は冥界に落ちた。ある…子供によって」
「子供?」
「ああ。元々僕らは『操の間』にいた。その操の間に一人の少女が現れた。操の間は、僕ら精霊ととある存在、そして天使だけが入る事を許される場だ。そんな所に少女が入って来た僕らは天使かと思った。だが、違った。この世界を乗っ取ろうとしに来た」
「…操の間は私達の祖先が世界樹と共に守る為に作った場…操の間が奪われれば世界は…」
「お前は知っているのか…それ以前に、お前らは天使…?」
「ああ。天使機関『ミオクルス』の者。訳あってこの人間界にいる」
「そうか…。で、僕らはそれを阻止する為に戦った。そして、ある人が助けてくれてそいつを撃退できた」
「なら…!」
「その後だ」
「え…」
「その後に悲劇は起きた。僕らもある人に助けてもらったとはいえ元素を使い果たそうとしていた。そんな時にアンタらの上司、ペルフィーゼは来た」
「ペルフィーゼ様がっ!?嘘っ…」
「まさか…マーテル…」
「想像している通りだろう。ペルフィーゼは僕達を戦う気力の無い僕らを…冥界を開き落とした。そして、僕らは冥界でさ迷うことになった」
「ペルフィーゼ様が…そんな事を…」
「嘘よ…嘘よ…ペルフィーゼ様が…」
「キュールはペルフィーゼ様に忠実に使える者だったから…な。まあ、私は命令には従っていたが下僕とかそういうことは無かったな…」
「冥界にいる時…僕らは身体を失った。そして、精神だけの僕らは元素を持つ者に取り憑いた。それが融合」
「そうか…」
「この世界に戻って来れた事で世界はまだ生きている…。冥界に僕らが居続けていたら世界は滅んだ…」
「…」
「操の間を操る事が出来るのはある人間と精霊のみだ」