ねぇ。



与えることでしか自分を保てなかった私達は


いつも空っぽで



虚しかったね?




でもね、本当の愛は




与えても、与えても溢れてきて溺れちゃうくらいおっきくて




優しかったよ。




その日、私は久し振りに夢を見た。


夢の中には出会ったばかりの頃の優ちゃん。
今とあんまり性格はかわらないけど、
優ちゃんの作ったフカフカのケーキの様に膨らんだ夢と
甘い香りに包まれてキラキラしていた。



また会いたい…あの頃の優ちゃんに…。



「夢…」

鼻を擽る甘い匂いで目が覚める。

優ちゃんは、もうケーキ屋はやんねぇ。
って言ってるけど私のご機嫌とりは手作りケーキって決まってる。

「ふぁ~…起きた?…ふあ~」

徹夜で作ってたらしくアクビが止まらない。

「京子ちゃんでしょ?」

私がクスクス笑うと。

「いや~すんごい剣幕だったよ…怖いのなんの…」


優ちゃんは目を丸くしながら。

「あんなのと付き合う人の気がしれね~」

ぶつぶつ言いながら手元は一切狂っていない。

クリームは、波形に綺麗にデコレーションされ上にはたっぷりの苺。


出会ったばかりの優ちゃんはパティシェの修行中でケーキ屋さんで働いていて。
腕は良く、将来は自分の店を持つんだってのが口癖だった。

でもある日、優ちゃんは店を辞めた。

優ちゃんはオーナーと喧嘩したって。言ってたけど後から人から聞いた話では。
優ちゃんのアイデアをオーナーに盗まれ、非難したら喧嘩になってクビにされたって。



酷い話。
すっかり嫌気がさしたのか今じゃこんなだけど。

それでも、今でも、こんだけ立派なケーキが作れるのに。




そう思うと涙が出た。


「ふぁ~ぁ…私もアクビうつった。食べる前に顔洗ってくるね?」

バシャバシャと勢いよく顔を洗いながら。

「1番大っきいのちょうだい」