「かーれーんー!」

「なあに?」


栗色の細い髪をなびかせ振り向いた。もちろん地毛だし、毎日ケアを怠っていないそれは夕暮れの太陽に照らされて輝いている。


「今日みんなで駅前のカフェ行くんだけど華恋もどう?」

「ごめーん!今日は優真と帰るんだっ」


特別仲がいいわけでもない彼女たちと一緒にカフェなんか行くよりも優真と帰る方が何百倍も楽しいし幸せ。

何を隠そう、あたしは優真のことが好きだから。


「篠田くんと華恋って幼馴染みなんだっけ?」

「そうだよ!」

「羨ましいなー、この年になっても仲がいい異性の幼馴染みなんて」


篠田 優真(しのだ ゆうま)とあたし、櫻井 華恋(さくらい かれん)は生まれた頃からの幼馴染みだ。


あたしは心の中でふふん、と自慢げに笑い、それから建前で

「羨ましいことなんてないよう」

と言う。


優真は間違ってもイケメンではないけれど、優しく人懐っこい性格から万人受けするタイプ。

あたしはそんな優真が幼馴染みということを誇らしく思っていた。