拓。

そう呟いて成瀬は、“彼”に近づいていく。

「拓…………!」

ごめんね……もう私のことなんて忘れてね。私あなたを殺したんだから。

「殺してないんだろ」
「え……」
「殺してないんだろう? 彼のこと。だったら」

「2年間、私のことなんて覚えている保証なんてないんだよ」

俺は何も言えなくなってしまう。
だけど、ここは何か言わなきゃいけない。

「だけど覚えているよ。こんなに想ってくれた成瀬のこと忘れないだろう」

「そうかな」
「うん」