「……お前」

 もしかして元南高の人だったり?
 とはいってもなんで声をかけてき――

「真田 里歩(さなだ りほ)か?」

 ……私の名前。

「な、なん、で、えっ?」
「お前学校来てないだろ」

 口の端に煙草をくわえ、呆れたように煙を吹かしていた。

 この人、サラリーマンとかじゃなくて、学校の先生?

 先生のわりには堂々と生徒の前で煙草を吸うというこの態度……。そしてなんで私の名前を知っているんだろう。

「望月と篠原が心配してた。早く学校来て安心させてやれよ」

 唯一話してる友達の名前まで知ってる……。

「そんな事言われても」
「一人で行くのが怖いなら明日先生と一緒に行くか?」
「嫌です。ていうか、やっぱり先生だったんですね……」

 ふうーっと煙を空の上に吹かす。大きな反応もせず、何考えてるのか分からないような人だった。

「今年から南高の先生を務めることになったんだ。名前は成田 和真(なりた かずま)、和風の和に、真実の真で和真」
「別に下の名前までの言わなくても」
「お前の担当の先生になった」
「ええ!?!」
「そこまで驚くこたぁないだろ」

 こんな不良っぽくてしっかりしてなさそうな人が担任の先生だなんて。
 最悪だ。行く気なくなる。

「望月と篠原も2Jでさ、お前と同じクラスなんだ。だから学校来いよ?」
「…………」

 目が合った。
 先生っぽくない先生はニカッと笑ってた。


「私は」
『あっ、成田せんせぇ〜こんなとこで何してるんですかぁ』

 南高の生徒だ!
 しかも美人、胸も爆発しそうなくらいデカい。なんで……この先生は、もしかしてモテるのかな?

「おー、もう暗くなるから帰れよ」
『先生送ってってよぉ?』
「ふざけんな。自分で帰りなさい」
『ええ、やだぁ』
「やじゃないの」

 そうは言うけど生徒は諦めてない様子。そんな胸を寄せなくても谷間なんて最初からできてるのに、自分の武器を使って先生を落とそうとしてる。

 ……チャラいんだろうなぁこの先生。
 だからこんな子が寄ってくるんだ。

「先生さようなら」

 立ち上がって別れの言葉を告げる。

「明日来るよなー?」

 先生は慌てることもなく私に聞く。けれど私はそれを無視して、先生に背を向ける。

『……感じワル』

 
 彼女が言い切った後、私は歩み始めた。