記憶の欠片




「橘美音さーん」



「あっ、呼ばれた!行ってくるね」



「うん」




診察室に入ると先生がニヤけていた。




「なに、ニヤけてるんですかー?」




「彼氏でしょ?」




「へ?」




「一緒に来た子」




「彼氏……みたいですね。」




「ってことは、まだ思い出せてないんだ」





「まぁ。どうしてなんですかね?どうして柊だけ……」




「人は忘れたいことがあるときに、強い衝撃が体に伝わると一時的に忘れちゃうことがあるらしいんだ」




「忘れちゃいたいこと?」




「そう。なにか彼とあったんじゃない?」




「それが分かればいいんですけどね」




「そのうち、思い出すよ」




「なんか、最近なにかと思い出すんです」




「なら、全て思い出すのも時間の問題だね」




「…早くすべて思い出して、柊を笑顔にしたい。だけど、本当は少し怖い」




「大丈夫。美音ちゃんは大丈夫」




「そんなのわかんない。私、意外と弱虫だし。」




「日向くんや蓮くんがいるじゃないか。もし全てを思い出して、嫌なくらい辛くなったら2人に頼ればいい。もちろん俺でも」




美音ちゃんはは一人じゃないよ。


そう言って頭を撫でてくれた。




「ありがとうございます」




「いつでもまたおいで。あと、薬ちゃんと飲みなさい」




「はーい!」




診察室からでて、柊のところに行くと柊はイスに座りながら寝ていた。