記憶の欠片


「なぁ、美音」


お互い黙ったまま歩いていると柊が口を開いた。


「なに?」


「なんか、思い出した?」


「ううん。まだ、思い出せない」


「そっか。俺、待ってるから」



そう笑ってくれる柊。


でも今の私にとっては、その柊の気持ちが重たく感じる。


「じゃあ、送ってくれてありがとう」


「お、おう」


私は柊から離れて家に入った。