優しい白衣の彼

「緊張してる?」


頷くと、

「ゆっくり息吸って吐いて」

また頷いて、言われたとおり呼吸した。


チェストピースが肌から離れると、カルテに何か書き込んでいた。

その間にYシャツのボタンを閉めて、響紀からカーディガンとブレザーを受け取って着た。


「ありがとう」



「どういたしまして」



「琴ちゃん、呼吸苦しくない?」

蒼生先生がカルテの書き込みをやめて、ちょっと真面目なトーンで聞いてきた。


ギクッ…

「苦しく……ないよ」



「なんか喘鳴が退院した日より聞こえるんだけど……やっぱりまだ退院早かったかな」



「そんなことないよ…」



「ならせめて、点滴してから帰りな」



「えっ、やだ」



「家帰って発作起きたら大変でしょ?だから吸入した後で、点滴しよ?」



「えっ嫌だ、帰る」

椅子から立ち上がると響紀が目の前に立ち塞がった。


「吸入頑張ろう?」