春毘side
命と話し合った時 リビング
「どうしたんだ」
「いやその、殴り飛ばして、悪かった」
「なんだ、そんなことでもじもじとしてたのか」
「お前、ムカツク。
人が素直に謝ってるのに」
命は、紅茶を淹れていた。
「普通、愛与をタブらかした俺を叩き出すこともお前には出来たはずだ。
恋人に手を出されたんだから、
でも、お前も今の関係を壊したくない。
愛与が望んでることを個人の意見や見解で勝手に終わらせることは出来ない。
何より、瑠佳が居る。
そんな親子をいきなり叩き出したら、愛与に嫌われることは確実だ。
とか、思ったんだろ」
図星をつかれて、黙ってしまった。
「俺は、それを全部分かった上で手を出した。
謝るのは俺の方で、殴られる覚悟もあった。
五年間、好きだった相手をいきなり突き放せないものなんだよ。
忘れようとして、子供が産まれて、
これから、もっと幸せに大切に暮らしていこうとした矢先にあの事故だ。
そして、親に初めて逆らって、瑠佳を一人で育てて――。
そんなときに、見つけた。
忘れることの出来ない人に――
だから、お前ら甘えて、優しさに漬け込んだ。
どう、考えても、悪者は一目瞭然だろ。
でも、後悔はしてねぇ。
俺も今の関係が心底気に入ってるからな」
紅茶をカップに淹れ、椅子に座り飲み始めた。



