「柴崎くん、だいじょうぶ?」

前の席に座る奥原さんがぱっと後ろに上半身だけ振り返った



”奥原詩帆”ー僕の前に座って必死に筆を動かす、2年4組もう一人の保健委員。

クラス、いや学年でもかなりモテる女子だ。明るくて、優しくて、可愛くて、こんな子いるんだって 正直思った。
廊下を歩けばみんなが二度見する人気者。



「僕はだいじょうぶ。それより奥原さんは進んでる?」

僕はアンケートの集計、奥原さんはポスターの作成。


「うん…いや…。あんま進んでない」

僕は腰を浮かせて、前の机に体を伸ばす

「あー…」

確かに本人の言う通り、ポスター上部の「歯をみがきましょう!」の文字だけがポップな太字でマジックで清書までされていた。しかしそこ以外は、白紙の領域だ。

「ポスター下んとこ、どうしよーかな」

白い歯に、歯ブラシ、あとはきらきらの星みたいのを書いとけばいいんじゃないかと思った。
でも廊下に掲示してある他のクラスのポスターがどれもそんな感じで本当にパクったと言われるのは間違いない。

「迷うよね」

考え込みながらあいづちを打つ奥原さんが可愛らしく思わず見つめてしまう