「だって柊くんがあまりにも意外なこと言うからちょっとびっくりして…」




「あの担任には文句言わないと気が済まないから、そのついでにこれ運ぶだけだから」




彼は不機嫌そうにぽつりと呟いた。




「ふっなにそれ。学級委員になったのは自分のせいなのに」




「黙れ」




私がくすりと笑うと、それが気に入らなかったのかギロリと睨まれた。




だが、そんなのはもう慣れっこで、睨まれても何事もなかったように私は言った。




「とりあえず、先生には柊くんが届けてくれるんだよね?ありがとね!それじゃ、私は先に帰るね。今日はお疲れさま」




柊くんからの返事は特になく、ただ視線を逸らされただけだった。




やれやれと思いながら、私はそのまま柊くんの横を通り過ぎた。




そして人気のない薄暗い廊下を歩いて玄関へとたどり着いた。




靴を履き替え外に出ると、大きな月が夜空を照らしていた。