無事入学式を終えてから2週間。
いまだ私の友達は絢人だけ。
完全に出遅れた感はあるけれど。
クラスの中の噂では、こうだ。
"絢人くんと西村さん、付き合ってるんだって~"
"クールすぎて近づけない"
私へのイメージが悪すぎることに気づいた頃、
絢人はさっそく不祥事を起こし1週間停学処分だ。
絢人とはLINEを交換しているので
連絡は取れるのだけど.....
【梨心~暇だわ~マジで】
そんなLINEしか来ない。
【なんで停学処分くらってんのよ】
【私学校で絢人しか友達いないんだよ】
【変な噂立ってんの!】
【いじめられたらどうしよう?】
授業中にメッセージを一方的に送る。
【友達なんて1人いりゃ充分だぜ】
絢人からはそんな文しか来ない。
教室は完全にアウェイで、さらに絢人がいないことで、居心地の悪ささえ覚え始めた。
休み時間になり、私は保健室へ向かう。
サボれるかな....なんて。
そういえば入学式以来、橋本先生に会ってない気がする。保健室にいるのかな~
────ガッ
開かない!!!!
保健室のドア開かない!!!!
見るとそこには張り紙が
"保健室使えません。
怪我した場合は事務室へ"
と書いてある。
怪我してないし....
あっ、そういえば完全に足首治ったな。
ちゃんとお礼も言えてないなぁ
どこ行こうかな....
まだ慣れない校内をウロウロしていると
気づけば見慣れない場所へやってきていた。
どこだろうここ...
サボるんじゃなかった。
すれ違う生徒の上履きは緑ばっかり。
2年生の校舎だ.....やっちゃった。
桜ヶ丘高校では、
体操服や上履き、リボン、ネクタイの色が学年ごとに違っていて
1年生は赤、2年生は緑、3年生は青
となっている。
私はリボンも上履きも赤いので
当たり前だが注目を浴びてしまった。
見慣れない顔だな、と
女子の目は敵を見るような目で。
すると1人の2年生の男子が声をかけてきた。
「1年?だよね、何してんの~?」
...............チャラい喋り方。
髪の毛は金髪に近い色で耳にはピアスが沢山。ネクタイはしてないかわりにネックレスをしている。
「迷っちゃって.....でも、大丈夫です。
1年の校舎って...あっちですよね??」
そう言って適当に指さす私。
彼は少しの沈黙を破ってププッと笑った。
「違うよ、全然。真逆だよ。」
取り巻きの女子たちもそれを見て笑う。
恥ずかしい。
────ギュッ。
下を向きスカートの裾を握る。
「可愛いな。連れてくよ?」
どき。
可愛いだなんて、何年も言われてない。
奈津子さん以外には。
むしろお母さんと、奈津子さん夫婦以外に、可愛いなんて言われたことないのかもしれない。
その時ちょうどチャイムが鳴り、
女の子たちは教室へ入っていく。
廊下には私と、先輩。
先輩は何も言わない私の手を引っ張り1年の校舎の方へと引っ張っていく。
「...あのっ」
「名前、教えて?」
そんなふうに微笑んでくる先輩。
この学校には背の高い人しかいないの?
「西村...です」
「ふぅ~ん。まあ、よろしくね?
オレは寛也。適当に呼んで」
は、はぁ....
そんなことより歩くスピードが速すぎて少し小走りになる。
「あ、ごめんね歩くの早かった?
可愛いな~ほんっと」
そう言って先輩は立ち止まる。
私はなんで立ち止まったのかわからず先輩を見上げる。
「あ、あの....」
私の言葉を遮るように先輩は私を壁に押し付けた。
えっ、これ壁ドン?壁ドンなの???
そんな疑問を遮るかのように先輩は口を開いた。
「そーんな短いスカート履いて
誰を誘惑してんの?新入生の梨心ちゃん♪」
誘惑....っ!!??
そんなことっ
てか、なんで私の名前知ってるの???
「なんで私の名前知ってるの?って顔してるね。有名だよ?梨心ちゃん」
「...なんでですか....?」
「ん~可愛いから???」
先輩はふざけたようにそう言う。
「ボタン、これ何個あけてんの?
スカートも短いし、メイクもしてる。
振り向かない男がいるはずないよね~?」
そう言って先輩は私のボタンに手をかける。
....っ!!!
何かを見透かしてるようなその目から
私は目をそらすことが出来なかった。
「抵抗しないの?
両手ふさがれて、身動き取れなのに」
その言葉で初めて自分の体勢に気づく。
両手は抑えられていて
両足の間に先輩の足が。
「............」
「随分余裕だな。気に入った」
先輩は私の手をパッと離し私のポケットのケータイを取った。
「えっ、ちょ、」
なれた手つきで何かを操作する先輩。
「俺の連絡先入れといたから、気が向いたら連絡してね??♪」
先輩はそう言い残してその場から去っていった。
