そして次の日の朝
────ざわざわ
ざわつく生徒を目の前に張り出された順位を見る。
2位 西村 莉心 844点(900点満点中)
私は今、驚きを隠せきれなかった。
私が2位?あの点数で.....?
そしてもっと驚いたのはなんと1位。
1位 橘 絢人 894点
.............私は自分の視力を疑った。
絢人が1位ってどうゆうこと!??
たまたまその場を絢人が通り過ぎていたので私は急いでその足を止める。
「あ、絢人っ。順位見た?」
「ん?ああ、ひよこが死んでそれどころじゃねえ」
......ひよこは今どうだっていいー!
「絢人、絢人1位だよ???」
「お前も2位だったじゃん」
何の興味も示さない絢人に私は食ってかかる。
「だって!ずっとひよこ育ててた絢人が1位だよ??何?894点って!ほぼ満点だよ??凄くない?どうゆうつもり???」
珍しく取り乱している私を見て絢人は眉間にシワを寄せる。
「お前....ぷはっ.....慌てすぎ.....くくっ」
.........恥ずかしっ.......。
私はコホンと咳払いをして
慌ててボサボサになった髪の毛を直す。
「.........だって絢人はてっきり留年するもんだと、思ってたから......」
「はあ?なめんなよ?俺はオールマイティなんだから」
ほんと、認めます。凄い。
だって体育の時だって50メートル走をスリッパで走って1位だったし......
好き嫌いないし.........
テストも、1位だし........。
凄すぎない?この見た目からは到底想像つかないよ。
その日のお昼休みは絢人の噂を駆けつけて教室の外には人だかりが集まる。
「えっ....あのクソヤンキー??あれが1位?やばくね?」
そんな声が丸聞こえだ。
「絢人完全に人気者だね(野次馬だけど)」
「よく聞いてみろ、梨心もいろいろ言われてんぞっと」
そう言って絢人は私のお弁当の卵焼きをつまむ。
コラッ
そう思いながらも教室の外に耳を傾ける。
「あの2人が上位とかすごくない...?」
「なんか革命でも起きるんじゃない?」
「てか西村って、あの子?え、あの可愛さで2位?凄すぎだろ惚れるんだけどっ」
そんな声が鳴り止まないまま私はお弁当を食べる。
その時絢人がガラッと椅子の音を立てながらドアの方へ向かう。
「自販機行ってくるっ」
チラっとドアの方を見たら顔をひきつらせた野次馬達が道を開ける。
さすが、絢人様。
私が1人になったことで野次馬達も次々と自分のクラスへ戻っていく。
...........ふぅ......。
やっと落ち着いて弁当が食べれる。
と思ったのもつかの間
────バンッ
.......................え??
目の前には髪の毛のストレートな綺麗めな女の子と、ツインテールの髪をふわっと巻いた身長の低い女の子がいた。
「えっ...と.......」
「に、西村さん凄いよ!!!」
「....はっ??」
急に小さい方の女の子が口を開いた。
確か二人とも同じクラスで、
確か名前は、杉原さんと、瀬名さん、だったかな。
「あっ、なんてゆーかその、友達になりたくて.......」
瀬名さんは続けてそう言う。
友達....?私と....?
入学式を経てから今まで学校で女の子と喋る機会が無かった私は驚きを隠せなかった。
「えっ....?」
すると、黙っていた杉原さんが口を開いた。
「西村さん友達になってくれる?私達ずっと、仲良くしたいって思ってたんだ。」
淡々という杉原さんに続けて
「うんっ!お願いっっっ」
瀬名さんは深々と頭を下げる。
いやいやいやいやっ
「う、うん、頭上げて?私で良かった...「ほんと!????嬉しいっ!!」
私が言い終える前に瀬名さんは体をガバッと上げ私の手を取り、目をキラキラさせた。
「西村さん、ありがとうっ」
杉原さんも満面の笑顔を向けてくれた。
美人だなぁ......。
「...知ってると思うけど、私は杉原 雪乃(スギハラ ユキノ)で、このちっこいのが、瀬名 翠恋(セナ ショウコ)ねっ。よろしくっ、梨心ちゃんっ」
........梨心ちゃんだなんて、同級生の女の子に呼ばれたの何年ぶり...?って感じだった。
「うん!よろしくっ。」
「私のこと、みんな翠ちゃんって呼んでるから、翠ちゃんって呼んでね!?」
「わかった、翠ちゃんと、雪ちゃん」
私は嬉しかった。
高校生活で友達は絢人だけなのかと心配していたんだ。
もし絢人を失ったら私は独りだから。
また、あの時みたいな辛い思いはしたくないと思っていたから。
「ほんとはずっと前から話しかけようと思ってたんだよねっ」
雪ちゃんは絢人の席に座りながら喋り始めた。
チワワみたいな翠ちゃんは....相変わらずまだ緊張しているみたいだった。
「えっ、そうなの?」
私なんかと話したいって思ってくれてたことに感動してしまう。
「うん、梨心ちゃん可愛いし美人だしスタイル良いし運動も出来るし勉強も出来るしこんな凄い人他にいないと思って!!!!!」
翠ちゃんはすごい勢いで言葉を並べた。
「翠ちゃんそれじゃ、見た目で判断したみたいになってるじゃん!」
雪ちゃんのチョップが翠ちゃんの頭に命中。
「.....ぷぷっ.....仲いいねっ」
見ていて思わず笑がこぼれる。
「.....でもなんで、今頃....?」
私はなんで今頃声をかけてきたのか、失礼ながら聞いてみることにした。
「いや.....それが....梨心ちゃんのガードマンが強者すぎてさ...」
は?私の頭の中はハテナマークで埋め尽くされた。
「....ガードマン?」
「ほらっ、アレだよ!橘くん!めっちゃ怖いじゃん.......!」
翠ちゃんは小さな体を震わせながらそう言った。
....絢人かーい。
その時私の背後に人の気配を感じ後ろを振り向こうとした時
「あ?誰が怖いつった....?」
そこには片手にパックの牛乳を持った絢人がすごい剣幕でチワ...翠ちゃんのことを睨んでいた。
「ストップ、絢人。勘違いだよ」
私がそう言って前を向くと翠ちゃんは既に涙目だ。
雪ちゃんは座っていたはずがいつの間にか翠ちゃんの後ろに立っていた。
絢人の席だからだね....笑
「友達だからっ。杉原雪乃ちゃんと、チワワみたいなのが瀬名翠恋ちゃんだから。」
「あ?興味ねーよ」
絢人は、散れ、と言わんばかりに牙を向く。
もう、警戒しすぎだよ....。
「ごめん.....こんなんでさ、根は悪い奴じゃないから...ははっ、ごめんね」
なんで絢人のために私が謝ってるんだ?
その時タイミングよくお昼休みが終わるチャイムが鳴ったので、2人は失笑しながら自分の席に戻っていった。
「あのね、友達になろうって言ってくれたんだから、絢人も仲良くなってよ!」
私が小声でそう言うと
Why?とジェスチャーして
チッと舌打ちをしながら教室を出ていってしまった。
午後の授業を受けているとポケットの中でケータイのバイブレーションが鳴った。
絢人【友達、出来てよかった】
なんだ。
私は絢人からのLINEを見てホッとした。これからもずっとさっきみたいな態度を取られるのかと思ってたんだもん。
ほんとは私に友達が出来て嬉しいんだ?
【絢人にも仲良くなってほしいよ】
ブー、ブー
【わーったよー。】
ちゃんと分かってくれたみたい...。
私は胸を撫で下ろし、一息ついた。
放課後絢人に一緒に帰ろうと誘われていたので下駄箱で絢人を待つことにした。
待ち時間のあいだ、私はあたりをキョロキョロ見回す。
「なーにキョロキョロしてんだよ帰るぞ~」
パシッと後ろから頭を軽く叩かれ絢人が来たことに気づく。
────先生探してたなんて
言えないよね。
あの日から学校で先生を見なくなった。
どこにいるんだろう。
やっぱり保健室で寝てるのかな?
「おい、ボーッとすんなよ」
そう言って、「ほら」と絢人が私の靴箱を開けた時、中から白い手紙が落ちてきた。
.......................ん?なんだろう?
その紙を絢人が拾い表を見る。
「......."西村さんへ"。....なんだ?」
パッとその手紙を絢人の手から奪い取りすかさず中身を確認すると、そこには
" 明日の放課後、屋上に来てください。話したいことがあります "
とだけ、殴り書きされたような文章があった。
「なんだろ......」
「はあ?告白に決まってんだろー」
告白?いやいや、それはないでしょ。
全くもって身に覚えがない。
「ま、かえろーぜっ梨心ちゃーんっ」
「お、おん」
私は半ば強引に手を引っ張られ絢人の後ろをついていく。
この日はたまたま7時間授業で、さらにその後LHRだったため、外はもう薄暗い。
てか今気づいたけど、
絢人なんで今日は徒歩なんだろう?
「一緒に帰ろって、そういえば方向真逆じゃん」
「暗いから家まで送るよ」
絢人はぶっきらぼうにそう言った。
......ふふっ。
まあ、こういう所が絢人なりの優しさなんだと思うけどっ。
だからこうゆう時は、甘えておくのが1番。
「ありがとー!」
絢人の顔を覗き笑顔でお礼を言う。
絢人は一瞬チラッとこっちを見たけど、
すぐにケータイに視線を落とした。
まったく、素直じゃないんだからー。
途中公園に寄ったりして
たわいもない話をしながら家に着いた。
「ほんと、ありがと!遠いのに。」
「おー、全然」
「そういえばどーやって帰るの?」
「バスで帰るよ。じゃーなっ」
「そっか。じゃあ、ばいばい!」
今日で5月も、終わりか~。