電話をかけた時
私はまだ12歳だった。
親戚の家に住んでいて、
そこの近くの小学校に通っていた冬。

電話番号の持ち主に電話をかけて、

冬休みから、私はその家に引き取られることになった。

それまで住んでいた家の人は、すごく喜んでいた。私が邪魔で、面倒な存在だったから。

おばさんの名前は 小林奈津子(コバヤシ ナツコ)
32歳で、とても綺麗で優しい人。
おばさんは結婚していて
旦那さんもとても優しい人。

ふたりは、
「今日から私たちの子だよ」

と、優しく微笑んだ。

とても安心する笑顔。

2人には子供は居なくて
一軒家の家に住んでいたので
私はそこへ住むことになった。

2人は私を私立の中学校へ
通わせてくれ、卒業するまで
何ひとつ文句を言わず、私を
精一杯可愛がってくれた。

私はこの2人が大好きで、大好きで、
大好きだった。

辛いことがあれば、真剣に話を聞いてくれたし
嬉しいことがあれば
笑いながら食卓を囲んだ。

2人は親戚ではなく、母の友人だと知ったのは私が中学生の時だった。
涙が溢れたのは、今でも覚えているよ。
私は昔から、ちょっとやそっとのことでは涙を流さなかった。
だから私の涙を見て、2人は優しく私を抱きしめてくれたんだ。


そうして私は高校へ進学することになったのだ。


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「ちょっとやだ、おばさんだなんて」

そう言って奈津子さんは笑った。

「ごめんなさい!間違えちゃった...」

私がこの家に来て、2人は、

奈津子さん、良孝さん と呼んでね
と言ったので
4年間そう呼んでいたが、
今でもたまに、おばさん、おじさん
などと読んでしまうことがある。

2人は母の高校時代の親友で
親戚ではないので、
おばさん、おじさん。と呼ぶのも
少しおかしな話なのだが。

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「梨心ちゃんももう高校生なのね.....
はやいわねぇ~♪」

「ほんと、ここまで育ててくれて

感謝してますっ。」

そんなこんなで
私は高校生になり、今日は入学式。
私は2人に迷惑をかけたくない思いで
勉強を頑張り近くの公立の高校へ入学することになった。
その学校はいいことに家から徒歩20分
電車代もいらなければ
学費も安い。

中学校は電車と徒歩で1時間もかけて
遠くの私立へ通っていた。
それなりにお金もかかっていたことを
私は理解していた。
だから高校はここを選んだのだ。

こんなことでしか恩を返せないけれど
それでもこれが精一杯の私の気持ちだった。

「じゃあ、行ってきます!」

「気をつけていってらっしゃい!」

そうして私の高校生活は始まった。