そろそろ帰らなきゃ......。

教室に帰ろうと思い椅子から立ち上がった時

────パッ


.......................え?

.............................................せんせ?

帰ろうとした私の手を先生がつかんだ。

起きてんの?

「せんせー?」


.......................スー......スー......

寝てる...よね?


「....もーちょい....おって.....」

えっ....?なに、言ってるの?

ていうかなんで、そんな紛らわしいことするの?
こんなんじゃ私、期待しちゃうよ。

寝ぼけてるんだとしても、私、期待しちゃうよ?

「せんせーのバカ。離してよ。」

寝ている先生には聞こえない声で。

聞こえないと思っていたはずなのに。

「嫌や。」

.................耳を疑った。

今、先生"いやや"って、言った?
寝てるんじゃないの?

咄嗟に先生の顔を見ると、先生はうっすら目を開けていた。

「嫌やって何よ....意味わかんないよ。」

目の奥が熱くなるのが分かる。

「もうちょっとおってって、言うたやん?」


先生、寝ぼけてないよね?
だってさっきの嫌やは返事だったし....

「先生、離してよ。」


先生は目を瞑ったまま何も言わない。
また寝たの?....

「.....きらい.....」

ボソッ
ほんとは嫌いじゃないけど。
先生からしたら私なんてそこらじゅうにいる生徒の1人で、そんな感情のひとつもないのなんて分かってるよ。

「....俺は好きやけどなあ、妹。」


やめてよ、そんな風に言うの。

それに、妹って言われるのも嫌だ。
ほんと、勘弁して。
こっちは本気で好きなのに、
そんな簡単に口にしないでよ。思ってもないくせに。


.......................パシッ

私は先生の手を振りほどいて保健室を後にした。

────ドキ、ドキ

なんでこんなドキドキしてるの?
無駄だってわかってるのに...。

涙が溢れて止まらない。
はぁ~.....胸が痛いよ、先生...。