「先生...の?」
ん?先生?
俺が屋上のドアに手をかけた時、
その向こう側から梨心の声が聞こえてきた。
「何歳やろな~、何歳やと思う?」
その声ははっきり聞こえた。
俺は屋上に入ろうかと迷ったけど
そこに入っていく勇気がなかったからドアにもたれて2人の話し声を聞いた。
完全にその相手は男の声で、
梨心が先生と言っていたので多分先生なんだろう。
関西弁の先生なんて、いたか?
その後の梨心の声は小さくてあんまり聞こえなかったけど、相手の声はずっと、はっきり聞こえてきた。
「お仕置きやなぁ~」
という先生の声。
「ちょっと、やめてよー!せんせ...」
梨心の声が止まった。
先生の声も、止まった。
沈黙を先に破ったのは先生の方だった。
「可愛いなぁ。ほんまに。妹みたい。」
俺は耳を疑った。
は?可愛い?何言ってんだ?
仮にもお前は教師なんじゃねーの?
俺はさっきより耳を澄ませた。
ほんとはこんなことしたくねーけど。
すると梨心のこえが
ごにょごにょと聞こえてきた。
「.....きなのに.......」
────────?????
......きなのに?
......好きなのに?
今、梨心が、"好きなのに"って言った?
誰を?
.......もしかして、先生を?
梨心が、先生を.....?
────────ズキッ
心が痛かった。
俺は今まででこんな気持ちになったことがなかった。
誰かを本気で好きになったことなんて、なかったのに。
「....お前なぁ。そんなんアカンねんで?」
良くも悪くもこの教師はちゃんと立場を理解しているようだった。
俺は放心状態のままその場をあとにした。
教室に帰るなり椅子にドカッと座る。
あー、イライラする。
なんなんだ?あいつは
誰なんだ?一体
可愛いって言ったと思えば、
今度はアカン?ふざけんなよ...マジで。
でも....梨心はあいつのことが
………好きなのか?
俺は.....
────お前のことが、
........好きなのに。───────
