────────────トンッ
何か飛び降りるような足音がして
ハッと顔を上げる。
目の前には屋上からさらに上に繋がる階段の目の前に立っている
────橋本先生。
「告白されちゃったなあ」
先生は笑いながらそう言う。
「....先生....いたの???いつから?」
私は話を全部聞かれてたんじゃないかと思い恐る恐る聞く。
「ん~、せやなぁ。最初から?」
フフッと笑う先生。
「(ガーン)」
「そんな落ち込まんといてよ。
それに、後に入ってきたんはお前らやぞ~?俺の昼寝...いや、朝寝を邪魔しよって。」
朝寝....?
先生もしかしてあの上で寝てたの?
........なにそれ可愛い.......。
「じゃあ、おはよう先生っ」
「.....全然寝られんかったけどなあ。
誰かさんと誰かさんの声で。」
わざと不機嫌そうな顔をする先生は
私の隣へ来て同じように座った。
「彼氏?どこいったんやろうなぁ」
また、フフッと笑う先生。
────────ズキッ
........彼氏だなんて言わないでよ。
さっきの話聞いてたなら、そうじゃないことくらいわかってるくせに....。
ポンッ
その時先生が私の頭の上に手を乗せた。
なに?と顔を上げると
先生はゆっくり口を開いた。
「....青春、やなぁ。」
ポカーンと先生の方を眺める。
先生が言ったことなんて正直とうでもよくて
私はその綺麗な横顔をずっと見つめる。
「....彼氏じゃないよ。先生」
それが精一杯だった。
「そりゃまあ、まだ告白の返事してないもんなあ?」
先生は前を向いてハハッと笑った。
そうゆうことじゃないよ、先生。
その優しくて大きい手も
そうやって笑う笑顔も
先生のこと、他になんにも知らなくても
でも好きなんだよ。先生────
私の好きな人はあなたで
絢人の期待には答えられないんだ。
「.....先生は、彼女とかいるの?」
「なんで?まあ、おらんけどな。
この年でおらんとか、恥ずかしいやん?」
そうでしょ?と首を傾げてこっちを向く先生。
やっぱりその笑顔から目をそらす事は出来なくて。
「先生何歳なの?」
「何歳やろな~、何歳やと思う?」
子供みたいな笑顔....。
「ん~、28歳くらい。」
「ぶっぶー!正解は、26歳でした、残念。お仕置きやなぁ~」
先生はそう言って私の頭を両手でワシャワシャした。
「ちょっと、やめてよー!せんせ....」
私が先生の手をつかんだ時
バシッと視線があって、時間が止まった。
先生の切れ長な目が、私を捉える。
今、何考えてる?
子供みたいって、思ってる?
「可愛いなぁ。ほんまに。妹みたい。」
ワシャワシャする手を止めて先生はそう呟いた。
"可愛いなぁ"
そのひとことにつかんだ手を離し
顔が熱くなっていく。
苦しい。こんなに
人を思ったことはないかもしれない。
まだ3回しか会ったこともない先生のことが、好きで、好きで、たまらない。
「ん?あれ?どおしたん?おい~
妹よ。」
妹なんてやだ。
「.....じゃない....。」
「なんや?」
「妹じゃ...ないよ...。」
先生は私の顔を覗いて不思議そうに見つめる。
「........好きなのに.........」
今先生がどんな表情をしているかは知らない。
ビックリした?呆れた?怒っちゃった?
だって、生徒が先生に
好きだって言ったんだもん。
そりゃ、変な顔してるはずだよね。
「.....お前なぁ。そんなんアカンねんで?」
顔をあげると先生は小さく笑っていた。
その笑顔が、好きなのに。
────伝わらなかった。
苦しい。悲しい。つらい。
ポンッ
そうやってまた頭を撫でるでしょう。
変に優しくしないでよ。
でも先生からしたら、私なんてわんさかいる生徒の1人だもんね.......。
生徒から告白されるなんて、
初めてじゃなさそうだし。
このまま嫌われちゃうのかな....。
ツー
目の奥が熱くなっていくのが分かる。
やばい.....
「まーた泣くんか。泣き虫やなぁほんまに!」
私は高校生になって、泣き虫になってしまった。
「...せんせぇのぶあがぁ......」
「はいはい。」
先生は私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。
そういう優しさがいらないんだよ。
わかってないなぁ、ほんと。
「先生はもっと、乙女心を勉強じなざぃ」
「はいはい、わかりました~」
ケラケラ笑う先生。
────やっぱり、好き。
