────ガチャッ


「......絢人~?」

「よぉ」

そこには不機嫌そうな絢人。

「おめーなんで学校来なかったん?」

口調悪くなってます...!絢人様!

「いや....なんとなく、行きづらかった。」

「なんで?なんかあったの?」

さっきまで不機嫌そうだった絢人は急に悲しそうな顔をして私にそう聞いてきた。
そんな顔しないでよ~......

「んー.....友達いないし、絢人もいないし.......って感じかな。」

「は?なんだそれ!俺のせいじゃん!」

絢人はまた表情を変えてそう言った。

「絢人のせいじゃないよ!私の問題」

「俺の問題でもあるわ。マヌケ。」

そう言ってフェンスの方に歩いていったので、チョコチョコとうしろをついていく。

「お前ほっとけない、マジで。」

ボソッと呟く絢人。

え?どういう意味?

「ごめん私が、もっとしっかりしてたら.....もう学校休まないし、ちゃんと友達も作る....「そうじゃねーよ」

私が言い終える前に話が遮られた。

「え?」

「ちげーよ、そーゆー意味じゃねえ。
おれお前のことほっとけねぇって。

謹慎中も、本当はずっと心配してた。
休んでねえかなって。」

「絢人....」

絢人がそんな風に心配してたなんて
私なにも知らなかったよ。

「お前入学式の日からずっと、たまに遠い目するんだよ。どこかを見つめて、悲しそうな顔すんだ。
俺お前の事情とか、なんかあるのかもって思ってたけど聞けねえし....。
だからずっと、ほっとけなかったんだよ。」

そう言うと絢人はその場に座り、フェンスにもたれた。

私も隣に座りフェンスにもたれる。

「絢人がそんなふうに思ってたなんて知らなかった、ごめんね。」

まだ1ヵ月も経ってないのに
こんなに思いやりがある人に出会えて
本当、良かった。
絢人は、その辺で噂を口にしたり悪口を言う人とかとは違うし、
いつも私のそばにいてくれた。
入学式の日、隣の席で、声をかけてくれた時からずっと私に寄り添ってくれた。

「俺、お前のこと何にも知らねぇよ.....」

絢人は髪の毛をクシャっとして、俯いた。

「絢人、ありがと。心配してくれてたの、気づかなかった、ごめん...。」

私のそのひとことを聞いて、
絢人は何も言わなかった。

数分の沈黙を先に破ったのは絢人だった。
「俺、梨心のこと好きだ。」


......................................................



「.........えっ?.....」

私は聞き間違えかと思って、聞き直した。
「梨心が好きだって言った。」

「え!????」

このタイミング!??急に!??

男の人から、好きと言われることなんて
初めてだった。
どう対応していいかなんて分かるはずもない。
あたふたする私の頭をそっと引き寄せ
髪の毛の上からそっと柔らかいものが当たった。

絢人が、キスをしたのだ。

そしてパッと立ち上がり、

「考えといて」

と言い残し屋上から出ていった。


────どき、どき。

赤面するのが分かる。
絢人に告白をされて、頭にキスまでされた。
あんな真剣な顔の絢人、初めて見た。

初めてだらけの高校生活に
やっぱりパンク寸前の私だった。

「.......告白....されちゃったよ。」