ドクンドクンと鼓動が脈打っている。


「ツラかったら俺を頼ってくれていいから。お前の力になりたいんだ」


「…………」


ありがとうもごめんねも、何も言えなかった。


ただ涙が出そうになるのを必死に堪えていた。


このまま頼ってしまいたい。


そんな思いが一瞬頭をよぎった。


矢沢君……あたしね。


春が来たら死ぬんだって。


病気なんだよ。


頭に腫瘍があるの。


もう……どうすることも出来ないんだよ。


手術で取り除くのもムリなんだって。


死ぬのを待つだけなんだよ。


こんなあたしを……受け入れてくれる?


話して嫌われるなら、いっそそっちの方がいいのかもしれない。


「矢沢君……っ」


「うん」


「あた、し……」


言おうと思えば思うほど、胸が苦しくて言葉が出て来ない。


「あ、たし……ね」


涙が一筋頬を伝って、手の甲にポタッと落ちた。


「っ……ひっく」


何度も何度も涙が頬を伝って流れ落ちる。


「あ、たし……っ」


「……うん」


背中をさすってくれる手があまりにも温かくて、涙が止まらなかった。


「やっ……ぱり、なんでも、ない……っ」


「…………」


だけど結局話すことは出来なくて、溢れる涙を拭うのに精いっぱいだった。