矢沢先生に見離されたあたしって……もう、完璧ダメだってことじゃん。


頭からすっぽり布団をかぶって、小さく丸まった。


ギュッと目を閉じていたって、目からは次々と涙がこぼれ落ちる。


「うぅ……ひっく……っ」


まさか……こんなことになるなんて。


あと1年で死んじゃうなんて、信じられない。


ううん、頭ではちゃんとわかってるけど受け入れることが出来ない。


奇跡が起こって助かるんじゃないか。


今この瞬間に、新しい治療法が見つかるんじゃないか。


先生の診断がまちがっていたんじゃないか。


そんな期待がどうしても拭えない。


まだ……死にたくない。


死にたく、ない。


怖いよ。


誰か……助けて。


のっそりベッドから起き上がると、足がもつれてその場に倒れた。


足に力が入らない……。


泣き過ぎて目の横がヒリヒリするし、腫れぼったい。


鏡に映ったあたしは、今日1日で別人のようにやつれてボロボロだった。



ーーコンコン



「菜都、開けるぞ」


ノックの音にハッとした。


慌てて涙を引っ込める。


起き上がろうとしても、体に力が入らない。


海生に情けない姿は見られたくないのに。



ーーガチャ



「菜都……大丈夫か?」


床に倒れたあたしを見て、慌てて駆け寄って来た海生。


そっとあたしの手を取ると、ゆっくり立たせてくれた。


「なによ……そんな泣きそうな顔して」


「いや、うん……あの。父さんに全部聞いた」


「うん……」



いつも元気で明るかった海生の顔に笑顔はない。


いきなりのことで海生も混乱してるんだろう。



「俺と父さんで頑張って菜都を支えるから!だから……治療を受けてほしい」


「…………」


「父さんが言ってた。すぐにでも放射線治療をした方がいいって言われたって」


「…………」


「菜都は大丈夫だろ?いっつも強えじゃん!だから、今度一緒に病院に」



海生がそっと目元を拭った。


久しぶりに見る泣き顔。


でも、あたしは泣いちゃダメ。