「あたしの勘がまちがってなければ、矢沢君も菜都のことを意識してると思うけど。授業中もたまに菜都のこと見てるし」


「ええっ……?」



あたしの席は窓際の後ろから二番目。


あたしの後ろが花純。


花純は人間観察が趣味のようで、一番後ろの席から客観的にクラス中を見渡すのが好きみたい。


矢沢君が……あたしを見てる?


どう考えてもありえないよ、そんなこと。


「次、お姫様やりたい人ー!」


今まで1人2人しか挙がっていなかった手が、ここに来てたくさん挙がった。


やっぱり、みんなお姫様に憧れるもんなんだ。


ちょっとは惹かれたけど、ちんちくりんのあたしがドレスを着ても似合いそうにないからわりとすぐに諦めがついた。


でも、矢沢君が王子様をやるなら……ちょっとやりたいかも。


釣り合わないと思うけど、相手が矢沢君なら……。


なんて妄想。


やめよやめよ。


あたしはリスかなぁ。


可愛いよね、リス。


うん。


「希望者が多いので、くじかジャンケンで決めたいと思いまーす」


「ちょっと待った。推薦してもいいっすか?」


いきなり話に割って入ったのは、いつも矢沢君と一緒にいる高垣君。


高垣君はいつもニコニコしてて、教室ではどんな時でもたくさんの人に囲まれている人気者。


それゆえ、高垣君の発言にはかなりの力がある。


「お姫様は春田さんを推薦したいと思いまーす。ちなみに、王子様には晶斗を推薦しまーす!」


「「「えっ!?」」」


今以上にクラス全員が一致団結したことはないってくらい、全員の声が揃っていた。


ちょっと……待って。


今、なんて……?