なんだよ、それ。


「それができたら、苦労しねーよ。お前は、5%の奇跡を信じてねーのかよ?」


そのために医者になったんじゃねーのかよ。


「信じてないわけじゃないっす。でも俺は、菜都の幸せを願うのと同じくらい晶斗さんの幸せも願ってるんです。菜都のためにここまでしてくれて、本当に感謝してます」


「俺の幸せは、こいつがいなきゃ始まんねーんだよ。お前がなんて言おうと、俺は諦めない」


忘れろなんて。


それができたら、アメリカまでくるわけねーだろ。


好きとか嫌いとか、忘れるとか忘れねーとか。


そんなんじゃねーんだよ。


「愛してんだよ、菜都のこと」


だから苦しくても我慢できる。


悲しくても、虚しくても、俺から菜都を切り離すなんて考えられない。


「そう、っすか。余計なお世話でしたね。晶斗さんの気持ちも考えずにえらそうなこと言って、すみません」


「お前なりに俺のことを考えてくれたんだろ?その気持ちだけ、ありがたくもらっとく」


海生は海生なりに菜都のことを考えてる。


それと同じように俺のことも。


「俺はそろそろ帰るんで、菜都のことをよろしくお願いします」


「気をつけてな」


海生はペコリと頭を下げて病室を去った。


『愛してる』なんて、我ながら恥ずかしいことを言ってしまった。