10年はやっぱり長いよな。


普通はそうだよな。


俺だってそうだ。


長いと思う。


周りの環境が変化していく中で、菜都への気持ちだけはずっと変わらない。


変わりたくない、これだけは。


「俺……こっちの大学に来る前に彼女と別れたんです。離れても好きでいられる自信なんかなかったし、うまくいかなくなるだろうって思ったから」


穏やかなトーンで海生は話を続ける。


「2年ぐらいは未練タラタラだったけど、今ではすっかり気持ちも薄れて……。新しい彼女もできて、人の気持ちは変わるんだなって実感しました」


海生がなにを言いたいのかはわからない。


だから真剣に耳を傾けた。


「俺なんかに比べたら、晶斗さんはマジでカッコいいと思います」


「褒めたって、なんも出ねーぞ」


「そんなんじゃないっすよ。ただ、晶斗さんを見てると時々ツラくて。勝手なことを言うようですけど、楽な道を選んだっていいんですよ?ここまで想われて、菜都は幸せだったと思います」


「なんだよ、楽な道って」


なんでお前がそんなことを言うんだよ。


「菜都を忘れて、幸せになってほしいんです」