ポタポタと涙が頬を伝ってシーツの上に落ちていく。


菜都の手が俺の手を握り返してくることはなかった。


だけど、この手はこんなにも温かい。


その事実にまた涙が溢れて、止まらなかった。


「菜都……」


そっと頬に触れてみる。


相変わらず反応はなかったけど、忘れかけていた菜都の温もりを肌で感じた。


生きてる……。


生きてるんだよな。


それだけで十分じゃねーのかよ。


もう二度と会えなくなったわけじゃない。


会いたいと思ったら会えるじゃねーか。


死んだわけじゃないのに、泣いてる場合じゃないだろ。


なんのためにここまで来たんだよ。


「生きててくれて……ありがとな」


手術、キツかったか?


痛かったか?


ツラかったか?


よく頑張ったな。


俺、お前のそういうところが好きなんだよ。


何事も諦めないで、まっすぐなところ。


奇跡を起こしたんだな。


今度は俺が頑張るから。


菜都のためにできることを精いっぱいやってみせる。


だから、見ててくれよな。