その日の夜。
玄関に座り込み、夜遅い親父の帰宅を待った。
ーーガチャ
「ただいま。って、なにやってんだ?」
「親父、アメリカに行かせてくれ!」
ギョッとしている親父に詰め寄り、頭を下げる。
「落ち着けって。どうしたんだよ、いきなり」
「あいつの……菜都のそばにいてやりたいんだ。今行かねーと、きっと後悔する。だから、頼むよ!」
ただ会いたくて必死だった。
菜都に会えるなら、どんなことだってしてやる。
それが俺だから。
「負けたよ、お前には」
反対されると思っていた俺は、意外な返事に驚いた。
恐る恐る顔を上げると親父は優しく笑っていた。
「ま、お前のことだから、そう言うだろうとは思ってたけど」
親父には俺のことはなんでもお見通しみたいだ。
恥ずかしいし癪だけど、頼んでる身としては文句は言えない。
「前にも言ったろ?お前は俺にそっくりだって。まっすぐで一途なお前を見てたら、昔の自分を思い出すよ」
クックッと喉を鳴らして笑う親父。
「だからだろうな。晶斗を見てたら、応援してやりたくなるのは。明日の夕方の飛行機で行ってこい。チケットはもう取ってある」
「親父……」
まさか、そこまでしてくれてたなんて。
「それだけ真剣に好きなんだろ?」
「ああ」
「だったら思うようにやってみろ」
「サンキュー……」
マジで。
感謝しかない。
いつか絶対に恩返しするから。



