『待っててくれなくていい』


あの日、そう言った菜都の声が頭から離れない。


待たないって約束したものの、本当にこれでよかったのかって……。


もっと他に、なにかできることがあったんじゃねーのかよ?


信じて待っててほしいって言われたら、いくらでも待つつもりだった。


だけど菜都は俺の幸せを願って身を引いたんだよな……?


もしも帰ってくることができたら、菜都から俺に会いにくるって……。


なんだよ、それっ。


だけど、俺は信じてる。


菜都は絶対に帰ってくるって。


それなのに……なんでこんなに苦しいんだ?


「しっかし、ビックリだよな。いきなり休学なんてさ」


ついてくんなと言ったにも関わらず、陽真はお構いなしに隣に並んで、ひとりペラペラ喋り続ける。


「花純ちゃんもなっちゃんがいなくて寂しがってるし、晶斗も元気ねーしなぁ。アメリカなんて遠すぎだよな」


「…………」


「明日から春休みだし、会いに行けば?なんなら、俺がついて行ってやろうか?」


事情を知らない陽真はのんきに笑っている。


会いたくないって言ったら嘘になる。


会いたいに決まってるだろ。


まだこんなに想ってるのに……。