それでもあたしは迷わなかった。


だって、他に助かる方法がないから。


何もしないでいるより、悔いのないようにしたい。


「あたしがアメリカに行くことは、晶斗にはまだ言わないでほしいの」


「どうして?」


「ちゃんと、あたしの口から言いたいから」


そう、ちゃんと言わなきゃ。


「オッケー、わかったよ。俺はなっちゃんが帰ってくるって信じてるからな」


「帰ってこられるといいんだけど……」


なんて、信じていないわけじゃない。


でも……怖い。


もしもの可能性の方を考えてしまう弱い自分がいる。


ダメダメ、強くならなきゃ。


「大丈夫だよ、なっちゃんは。こんなに頑張ってるんだから、きっと神様も味方してくれる」


先生は励ますようにあたしの肩をポンと叩いた。


とても優しい眼差し。


「手術が成功して……日本に帰ってくることができたら……その時は」


そう、その時はーー。


キミと同じ未来を歩いて行きたい。


キミの隣で笑いたい。


そう思うんだ。


成功率10%のあたしの未来。


「信じて待てないほど、あいつはヤワじゃないよ」


「うん、わかってる。でも……」


優しい晶斗なら、何年でも待っててくれるって。


でも、もしうまくいかなかったら?


そのまま死んじゃったら?


きっと今以上に苦しめることになるでしょ?


そんな言葉が喉元まで出かかったけど、口にはしなかった。


先生はそれ以上何も言わず、ただあたしの頭を優しくポンと撫でてから病室を出て行った。