「菜都……手術のことは、これから話し合って決めよう」
「うう、ん……その必要はない、よ。あたしには、もう……っ時間がないの。だから……今、決めた」
「菜都、でも……」
「おと、さん……お願い。あた、しの……最後の……ワガママ、聞いて。まだ……諦めたく、ないの……生きる、ことを」
必死になって訴える菜都。
俺は……バカだ。
なんで諦めようとしてんだよ。
俺は……俺だって!
菜都の前で諦めないって誓っただろ?
助かる方法があるってのに、なにを弱気になってるんだ。
信じなきゃ叶わねーんだよ!
しっかりしろよ、俺。
ーーガラッ
気づくと部屋のドアを勢いよく開けていた。
「俺からも……お願いします!菜都に手術を受けさせてやって下さい!」
死ぬのが怖いって言ってた菜都が、こんなに必死に生きようとしてるんだ。
俺が諦めてどうすんだよ。
好きなら一番に味方になってやらなきゃダメだろ。
「晶斗……お前、なんでここに」
「菜都が大変な時に、のんきに授業なんか受けてられるかよ!頼むよ、オヤジ。医者だろ?すげーんだろ?菜都を……っ、菜都を助けてやってくれ……っ」
オヤジの目をまっすぐに見つめる。
視界の端っこには、ビックリしたような表情を浮かべる菜都がいた。
調子がよくないのか、青白い顔をしている。
呼吸も苦しそうだ。
「先生……あたしからも、お願い。助けて、下さい……っ」
生きることを諦めていた菜都の心の声。



