「生きるか死ぬか、一か八かの勝負です。成功したとしても、意識が戻る可能性は低いし、目が覚めたとしても、後遺症が残るリスクが高い。リハビリをしても、どこまで回復するかはわかりません。もしかすると、一生寝たきりで過ごすことになるかもしれない」


オヤジの声が遠くに聞こえて、立っているのもやっと。


握りしめた拳がプルプル震えてて、必死に抑えようとしたけど止まらなかった。


「成功する確率は10%。なおかつ、日本ではほとんど症例がない難しい手術です。失敗すれば……命はないです」


「……っ」


なんだよ、それ。


菜都は大丈夫だつってんだろ。


なんで……そんなこと言うんだよっ。


気づくと目の前がボヤけて、頬に生温いものが流れていた。


今まで考えたくなかった。


認めたくなかった。


だってさ……認めたら本当にそうなりそうで。


菜都がいなくなるなんて、俺には考えらんねーよ。


10%って……。


「せん、せい……あたし、受け、ます……っ」


指で涙を拭った時、か細い菜都の声が聞こえた。


「なっちゃん、目が覚めたのか?」


「菜都……具合いはどうだ?」


まるで何事もなかったかのような2人の声も聞こえた。


「だい、じょうぶ……っ。それより、さっきの話……あた、し、手術、受けたい」


途切れ途切れに、でも必死に思いを告げる菜都の声に胸が締めつけられた。