キスは初めてじゃないのに、緊張して言葉が出てこない。


心臓がすごい速さで動いてる。


まともに目を合わせられないよ。


「嫌なの?」


それでも晶斗は淡々としていて、あたしひとりだけがこんなに焦っている。


「えっ、と……嫌っていうか、恥ずかしくて」


しどろもどろになりながら答えたあと、とっさに下を向いてしまった。


「ふーん、じゃあ問題ねーな」


「え……?」


顎をクイッと持ち上げられ、至近距離で目が合った。


整った顔立ちと色気を含んだその眼差し。


「目、そらすなよ」


「んっ……」


甘く小さな声と一緒に降ってきた唇。


あたしは息をするのも忘れて、晶斗の唇の温もりをただただ感じていた。


「泣き止んだか」


しばらくして唇を離すと、晶斗がそばで微笑んだ。


「うん……ごめんね」


こんなに優しいキスをくれるなら、もう少し泣いてみてもよかったかもしれない。


離れた唇がなんとなく寂しくて、そんなことを思った。


一緒にいればいるほど、思い出が増えれば増えるほど晶斗を求める気持ちが強くなる。


ずっと一緒にいたい。


そんなことを考えてしまう。


病気になんか負けたくないよ……。