「菜都は屋上でよくボーッとしてるもんな」


晶斗はチラッとあたしを見て、イジワルな笑みを浮かべた。


からかわれてバカにされているのに、なぜかドキッと胸が鳴って。


仕返しのつもりで繋がった方の手をギュッと握る。


「仕方ないじゃん、静かな場所が好きなんだから」


ちょっと嫌味っぽい言い方になっちゃったかな。


「俺も静かな場所の方が好き」


手をギュッと握り返された。


そしておもむろに体をこっちに向けて、あたしの手を引き寄せる。


一気に距離が近くなったかと思えば、今度は耳元に唇を寄せられて。


「けど、菜都と一緒にいる時の方がもっと好き」


「なっ……」


ズルいよ、そんな風に甘く囁くなんて。


胸がキュンと締めつけられて、まともに顔を見られない。


きっと今、あたしの顔は真っ赤だ。


「菜都は?」


「え?」


「俺のこと好き?」


「……っ」


そんなの、恥ずかしくて堂々と口に出して言えない。


「どうなんだよ?」


クールだと思ってた晶斗は、いつの間にこんなに甘くなったのかな。


「菜都」


やめてよ。


そんなに切羽詰まったような声で名前を呼ぶのは。


答えないあたしが悪いことしてるみたいじゃん。