長いようで短かった冬休みが明け、少し緊張しながら学校へ向かった。


はっきりきっぱり言ったんだ。


もう矢沢君はあたしに声をかけて来ることはない、はず。


クリスマスイブのあの日……好きだってことは言えなかったけど。


でも、これで……よかったよね?


あと3ヶ月……たった3ヶ月。


あとどれくらい、学校に通えるかな。


足が動くかな。


息が出来るかな。


普通の生活が出来るかな。


出来なくなる日はきっと、もうそんなに遠くないはず。


……怖い。


「は、春田さん……」


校門をくぐった瞬間、後ろから誰かに呼び止められた。


振り返ると、見たことのない男子が緊張したような面持ちで立っていて。


目が合うと、照れ臭そうに頬をかいた。


「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」


「は、はい……」


なんだろう……?


疑問に思いつつ、連れて来られたのはひと気のない校舎裏。


日陰になっててかなり肌寒い。


「あ、あの!俺、入学した時から春田さんのことを可愛いなって思ってて……!よかったら俺と付き合ってくれないかな?」


「え?」


「なかなか声をかけられなくてごめん!春田さん大人しいのに、矢沢と噂されてるのがあまりにもかわいそうで。俺と春田さんならお似合いだと思うんだけど……!ってか、絶対お似合いだから」


「えーっと、あの……」


意味がわからないんですけど……。


「矢沢なんかやめて、俺と付き合って」


ジリジリと歩み寄って来る目の前の男子。


目が笑っていないというか、なんとなく表情が固くて怖い。


「春田さん……俺、マジでキミのことが好きなんだ。サララちゃんにそっくりで可愛い」


「サ、サララちゃん……?」


「アニメの中の女の子だよ。春田さんに激似なんだよ。だから、サララちゃん……俺のものになってよ」


や、やだ。


なんなの?


あたしはサララちゃんじゃないのに。


気持ち悪い……!


逃げようとしてみても、足が竦んで動かない。