まさか、あたしが穂月のために涙を流すなんて思ってもいなかった。


誰からも必要とされないと感じた穂月は、司に救いの手を求めたんだ。


家も近いし、なにかあったらすぐに頼ることができる。


たとえ司がどんな性格だろうと、穂月からすれば関係のない事だったに違いない。


あたしは朝起きた時に穂月がスマホを握りしめていたことを思い出していた。


穂月は司が捕まった時言って一晩中泣いていたんだろう。


唯一自分の事を救ってくれる人がいなくなって、とても心細かったに違いない。


でも……司を救うためには警察の手を借りるしかなかった。


司はドラッグをやめるつもりでいたんだ。


だから、そのきっかけをしっかりと作ってあげれば更生への道は開けるはずだった。


あたしは歩調を緩めてファミレスへと向かった。


一旦落ち着こう。


そしてちゃんと考えるんだ。


司という支えを失った穂月が今後どうしていけばいいのかを。