それから、12階について、あわてて手を離して、エレベーターを降りるあたしに、湊くんは手をふった。 まるで、無害な子犬みたいな目で。 湊くんも、男なんだ。あたしは思わず声にだして、つぶやいた。繋がれていた手のぬくもりは、優しくあたしに余韻を残した。