"「.........」
客室へ入ると裕司が寝ていた
「成津谷、これは何?」
そう聞くと成津谷は笑顔で
「婚約者様の光月裕司様でございます」
「いや、そうでなく!」
私はつい大声で言い返した
すると成津谷は人差し指を自分の唇の前に立てて
「シーッ!
裕司様が起きてしまわれますよ」
そう言われて私は裕司に近寄り頬を軽く何度も叩いた
「起きてください!
こんな所で寝られても困ります!
眠いのでしたら家に帰られたらどうです?」
そう言うと成津谷が止めに入り
「お止めください
恐れながら申します
裕司様は体調が優れなかったためにここで休養を取ってらっしゃいました
無理に起こすのは体に良くないと思います」
そう言われてなんだか私は悔しくなった
「なによ!
この人のどこが具合い悪いのか分かんない!
私まだ10なのに婚約者が来たとかよく分かんないし!
結婚したら私、家出るんだよ?
成津谷は悲しくないの?
この人は嫌じゃないの?2人ともおかしいよ
婚約だって古いし...
そ、それに!」
そこまで言うと成津谷が
「お気持ちは分かります
けれど、今はきちんと旦那様と奥様の言う事をお聞きになって下さい」
そう言われて私は泣き出してしまった
泣いて私は部屋を出た
とにかく私は全部嫌で...
両親の顔も私は写真でしか見たこともなければ
4つ年上の兄も見たことは無い
家は広くて、ご飯を食べる時もいつも1人、成津谷含む数人が後ろに立っているだけ...
ご飯を美味しいと思うのはいつも学校で皆と食べる給食だけ...
なのに、両親の言う事を聞けと言われても聞けるわけがない"

